数年前「ぬいぐるみの扱いが雑だからさわらないで」と言われてたことがある。
自覚がなく思いもよらないことで反省した。以後他人のぬいぐるみには触らないように気をつけるようになった。
わたしはぬいぐるみの名前が覚えられない。今住んでる部屋には大きなアザラシのぬいぐるみがある。かわいい。ぬいぐるみに名前をつける文化が存在していることを知っていたので、部屋に届いてすぐに名前をつけた。
が、呼ぶことがなかったのでつけたはずの名前をすぐ忘れた。
このアザラシは、わたしがベッドで読書するときの背もたれクッションとして活用されてる。かわいいな、と思うのだけど、物質や道具への気持ちがつよく、愛がもてない。
そんな私でもぬいぐるみを唯一無二とし愛しんでいたこともあった。
幼いころ、私はバレーボール大のキティのぬいぐるみをかわいがっていた。ふわふわの白い猫の顔に、赤い布地の胴体。胴体にはビーズがつまっていて、持ち上げるとしっとりと重く、さわるとやわらかく手が沈んだ。他にもぬいぐるみは持っていたけれど、そのキティだけは特別だった。幼い私の注いだよだれと愛の分だけそのキティは薄汚れていた。
けれど、ある日突然キティは親によって捨てられてしまった。私に断りなく、気がついたらもうそこに彼女はいなかった。キティを捨てた母は「私も小さなころにプーさんを捨てられたことがある!」と言っていた。なぐさめにはならなかった。
キティがいなくなってから、私は部屋にあったぬいぐるみをすべて大きな透明のビニール袋につめて古布回収の日に捨てた。
以来、私はぬいぐるみの名前を覚えられない。